冬の蝶
人里離れた山奥の集落で育ったサチは、実家を離れて都会で一人暮らしをしていた。
ある朝、認知症の祖母から電話がかかってくる。「おばあちゃん、さっきね、蝶々をつかまえてきたの。今ね、手の中に隠してるの。今度、サッちゃんと会う時に見せてあげるわね。」
しばらくして今度は母からさっきまで電話で話していた祖母が危篤であるという連絡が入り、サチは信じられないまま実家へと向かう。冬の山々。生まれ育った実家。眠ったままの祖母。幼い頃、兄と見つけた不思議な蝶の思い出。実家に到着したサチは兄から”あの時の蝶”を今朝見つけたと知らされる。サチは自分の記憶とともに、故郷を巡り始める。