クアラルンプールの夜明け
仕事も家族も失って自暴自棄に陥っていた日本人の男・辰巳のもとに、ある日、一通のエアメールが届く。消印はマレーシア。中には不可解なアラビア語の文章と写真が入っていた。手紙に導かれ、辰巳はマレーシアを訪れる。 クアラルンプールの街を彷徨う辰巳が出会ったのは 娼婦の「リン」とその息子「ヨー」。 辰巳がそこに見たものは・・・自分自身だった。激しい折檻、愛を拒絶する親。自分を赦せず苦しみ、人を赦せない人間の姿。辰巳はリンの姿に自分と同じ業を感じて嫌悪感を抱く。一方、悲しく暗い目をしたヨーに、辰巳は幼い頃の自分を重ね、少しづつ心を開いていく。 ある日、少年が彼らの前から姿を消してしまう。男と女はそれをきっかけに、今までの自分の罪を強く意識する。そして、それらは贖罪によって救われると言う事を、共有の人物から教えられていた事を知るのだった。 近すぎるがゆえに遠ざかってしまう、分かり合えない肉親への葛藤。息子として、親として、夫として。それぞれの立場で、誰もが一度は感じたことのある肉親への葛藤を描くヒューマンドラマ。