おやすみなさいを言いたくて
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アフガニスタンの首都カブール。ある場所で厳粛な儀式を行っている女たち。その傍らでは、取材のためなら命すら惜しまない報道写真家レベッカが、彼女たちの行動を一部始終撮影している。女たちは自爆テロ犯だ。さらに真実へと迫るためレベッカは、女たちに同行するが、爆発に巻き込まれ危うく命を落としかける。家族が待つアイルランドへ帰ると、夫マーカスから思いもよらないことを告げられる。「もう無理だ」と。世界有数の写真エージェンシーと契約し、常に死と隣り合わせになりながらもアフガニスタン、コンゴなど紛争地帯へと赴き、トップクラスの報道写真家として仕事に邁進してきたレベッカ。それは、理解ある夫、しっかり者の長女ステフ、天真爛漫な次女リサたち家族のおかげだった。一緒に日常生活を送れなくても、すべて上手くいっていると思っていた。だがマーカスはひと時も気の休まらない生活に疲れ、娘たちは母の死に怯えて暮らしていた。特に思春期のステフは、自分の世界に引きこもり母の入る余地がない。家族の幸せのために、「もう戦地には戻らない」とマーカスと約束するレベッカ。仕事を優先するあまり、娘の誕生日すら一緒に祝えず、まともにキッチンすら立つことのなかった彼女は、取材の依頼を断り家族との時間を取り戻そうとする。しかし一方で、名誉や報酬ではない使命を帯びた報道写真家という職業への情熱を捨て去ることができない。自分の写真には世界を少しでも変える力があることを確信しているから。その思いが決意を揺るがし続け、母として妻としての普通の生活を送ることを困難にさせていく。家族への「愛」と引き換えにしていい「使命」などないと知りながらも、必要とされる紛争地帯へと心は向かっていく。そんな時、ケニアの難民キャンプを撮影するという仕事のオファーが舞い込む。難色を示すレベッカを余所に、高校の課題に役立てたいステフは母とともにケニア行きを熱望する。安全が約束されているということもあり、マーカスも二人のケニア行きを許してしまう。だが、そこでレベッカは取り返しのつかないことをしてしまう。壊れゆく家族と必死に向き合おうとするうち、大切なことに気づいていくレベッカ。使命ある仕事か、愛する家族か、悩み続けた末にレベッカが選んだのは…。