花宵道中
(C)2014 東映ビデオ
江戸末期、吉原。
母親に虐待を受けて育った朝霧は、母が死んだ7歳の時に霧里に拾われ、霧里が勤める山田屋に引き取られて遊女となった。慕っていた霧里が身請け先で亡くなってからは、男を信じず、籠の中で空虚な日々を過ごしている。やがて朝霧は、身体が熱を帯びると肌に赤い斑点が顕れるその様子が「躰に花を咲かせる遊女」として評判を呼び、山田屋一の人気女郎となった。
朝霧の年季明けが一年後に迫った天保8年、間夫との足抜けを目論んだ女郎が廓に火を付け、吉原が全焼した。女郎たちは吉原の外にある仮宅へと移り住み、つかの間の小さな自由を感じられる日々を送る。
ある日、朝霧は妹分の八津に強引に誘われて八幡様の縁日へと繰り出す。人ごみに揉まれて転倒し、下駄の鼻緒が切れてしまった朝霧は、半次郎という京からやってきたばかりの染物職人の青年に助けられる。髪をぼさぼさにしながらもう一方の下駄を人ごみから見つけ出してくれた半次郎に、朝霧は胸の高まりを覚える。間夫との恋愛はご法度。朝霧の変化に気づいた山田屋の女将は、見透かしたように「股ひらかざる者、喰うべからず!」と朝霧を叱咤する。
数日後、呉服問屋の吉田屋が山田屋で宴を催した。座敷に呼ばれた朝霧は、そこで半次郎と思わぬ再会をしてしまう……。 朝霧を気に入っている吉田屋は、朝霧と半次郎との間のただならぬ気色を感じとり、ふたりの関係に横やりを入れてくる。それは、半次郎には吉田屋の遠縁との縁談を、朝霧には吉田屋の身請け話という残酷なものだった――。