一粒の麦

(C)KADOKAWA 1958
福島駅を臨時編成の集団就職列車が出発した。この中には平田中学の井上先生に引率された生徒達が乗っていた。彼等は上野駅に着き、職安の係員によって各雇主に引渡された。渡辺梅夫はそば屋へ、新井香代は大沼病院、西山強は須山自動車修理工場、実・次男・権三の三人は鉄工場へ、四郎と誠はガラス工場、夕子・明子・かつは浜松の織物工場へ、それぞれ就職していった。郷里に帰った井上先生は、相沢校長から来年も就職の世話を頼まれた。勉強する暇もなく、これが真の教育者であろうかと、疑問を持つ彼の気持は重かった。そんな彼を励ます同僚のイチ子先生と結婚することになった。

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