戦争と一人の女
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「どうせ戦争で滅茶々々になるのだから、今から二人で滅茶々々になって、戦争の滅茶々々に連絡することにしようか」作家はそう言い、飲み屋の女と刹那的に同棲を始める。しかし、幼い頃遊郭に売られた女は、感じない体になっていた。心と体に欠落を抱えた女と男は、どうせ戦争で死ぬという絶望と虚無の中、それでも、「戦争が終わるまで、やりまくろうか」と、ただひたすらに相手の体を求め続ける。
一方、中国戦線で右腕を失った男が、妻と幼い息子に迎えられ帰ってくる。男が失ったのは、腕だけではなかった。戦場での精神的後遺症から、男は妻との性行為を出来ずにいた。そんなある日、焼け跡で数人の男に襲われている女を見つけ、自分が興奮していることに男は気付く。中国で女を犯し、殺した記憶が甦ったのだ。その日から男は、「お米が手に入るよ」と言っては何人もの女を山奥に連れ込み、犯し、殺し始める。男の中で何かが目覚めたのだ。
戦争によって大きく損なわれた、一人の女と二人の男。その三人の運命がやがて交錯し――。