裏切りの闇で眠れ

闇の向こう側から、男が歩いてくる。煙草をくゆらせ、サングラスで表情はわからない。男は“フランク”と呼ばれている。仲間のジャン＝ギィと闇社会で危険な商売を請け負っているのだ。パリ、ナイトクラブ。クロード･コルティが先ほどまで試合をしていたボクサーを迎える。クロードはこの闇社会で力を持った数少ない男。売春斡旋業、麻薬売買、偽札、車の盗難、恐喝、ピストル強盗…、彼は自分の縄張りで起こることは何でも知っている。暴力だけが彼を生き続けさせ、裏切り者には容赦はない。クロードの情婦ベアトリスは、彼が凶暴な悪党であることも承知で、それでも彼を愛している。フランクはその冷静な頭脳と非情な働きで、この闇を牛耳る男クロードの信頼を得ている。しかし―。些細なきっかけでクロードが投獄される。いったい誰の陰謀なのか。主人なき混沌の街で、敵味方もわからぬまま、裏切りが裏切りを呼ぶ。果たしてフランクは、独り、裏切りの闇を抜け出ることができるのか。それとも彼は、この闇でしか生きられない男なのか。