照明熊谷学校
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日本映画史に残るどんな傑作も、《光》がなければ輝くことはできなかった。半世紀にわたって日本映画を照らし続ける照明技師・熊谷秀夫。鈴木清順の様式美、相米慎二の長まわしは、熊谷なくしてはありえなかった。この秋公開の『透光の樹』でも活躍中。すでに伝説、そして現役の照明技師・熊谷秀夫にスポットをあてたドキュメンタリー。
熊谷秀夫は、およそ50年にわたって日本映画界に多大な貢献を果たし、今も現役として活躍中の照明技師である。そのキャリアは大映京都撮影所の照明助手として始まり、その後日活撮影所に移って1958年『赤いランプの終列車』で一本立ち。以後、錚々たる監督作品群の照明を担い、70年代は日活ロマン・ポルノに欠かせない人材としてその存在を際立たせ、80年代以降はフリーとして活動。これまでに担当した本数は既に150本を超える。本作は、そんな熊谷秀夫が各作品にて試みた照明テクニックの数々を、実際の映像と併せながら本人自身の言葉で語り、そこから映画において照明とは一体どのような位置づけをもつのかを探っていくドキュメンタリー作品である。
いかに光を当てるかにこだわった50~60年代から、逆に光を消すことを試みた70年代、そして現在、ナチュラルな映像が主軸となって久しい映画界の風潮に対する是非を問う彼の一言一言からは、長年の実績が持つ重みと誇りが満ち溢れている。と同時に、映像を通して彼の言葉に触れる我々観客は、映画における光と闇とは一体何であるのかを改めて考えさせられることになるだろう。