アンテナ
(C)2003『アンテナ』パートナーズ
荻原祐一郎は、幼い頃に妹・真利江が失踪している。隣に寝ていた祐一郎は母親から「何か、見ていたんじゃないの、お兄ちゃんでしょ」と責められ、ずっと、その自責の念に苦しんでいる。妹はいまだに生死もわからないのだ。母親はその後、宗教に頼るようになり、父親は祐一郎が16の時に病死している。ある日、出雲で監禁されていた少女が発見されたというニュースがあった。母親は「あれは真利江だ」と言い、弟の祐弥は真利江が帰ってくる」と言い出して狂乱する。そこで、実家に帰った祐一郎だが、家には重苦しい空気がよどんでいる。かつて荻原家の事件をテレビ番組で追っていたディレクター、相馬も出雲の事件に刺激されて、ふたたび現れる。彼も妻の謎の失踪を経験しているのだった。祐弥は退院にあたって、祐弥は「これからは真利江として生きてみようと思う」と兄に話す。母親がひそかに買い続けている真利江の服を着て、玄関口に立った祐弥に母は「おかえり」とほほえんだ。祐一郎は、取材という名目で知り合ったナオミS&Mの女王ナオミに電話をかける。哲学を専攻する彼は、テーマにS&Mの研究を選んでいたからだ。彼女に苦しみを吐き出し、祐一郎の自傷癖もおさまっていく。祐一郎はナオミとの時間が自分の中のなにかを解き始めていると感じていた。6歳の真利江への叔父の性的悪戯。祐一郎は何度もそれを目撃しながらも、妹を救えなかった罪悪感。その苦悩をはき出した祐一郎はナオミによって許されることで現実に立ち向かう力を得る。そうして、祐一郎は現実と妄想の狭間へと歩き出すのだった。
- 公開日
- 2004年1月10日(土)
- 監督
- 熊切和嘉
- 撮影
- 柴主高秀
- 製作年
- 2003
- 製作国
- 日本
- 上映時間
- 117
- INTRODUCTION
- 15年前に失嫁した妹について、自分はなにかを目撃していたのではないか、という罪悪感にさいなまれている。心を閉ざして自分を守ってきた主人公祐一郎が、S&Mの女王ナオミと出会い、”アンテナ”(=真実を感じ取る力)を獲得し、遂には封印してきた家族の向かい合うまでが描かれている。原作はベストセラー作家、田口ランディの同名小説「アンテナ」で、彼女の長編小説第2作目だ。田口ランディは、インターネットマガジンのコラムで人気を集め、小説家としてデビューしている。この作品を映像化したのは『鬼畜大宴会』でタオルミナ国際映画祭グランプリに輝く、鬼才・熊切和嘉監督。2001年には『空の穴』を発表している。繊細な主人公主人公を魅力的に演じるのは『ロックンロールミシン』『アカルミライ』の加瀬亮。S&Mの女王、ナオ~には『PARTY7』『DRIVE』の小林明実。親役の麻丘めぐみ、テレビディレクター役の宇崎竜童が、若い監督の熱意に応え、新たな表情をみせているのも魅力だ。また、舞台でも活躍中の実力派、大森博、小市慢太郎が脇を固める。『空の穴』の主演、寺島進のカメオ出演も見逃せない。本作は、第60回ベネツィア国際映画祭コントロコレンテ部門に正式出品された。
- STORY
- 荻原祐一郎(加瀬亮)は、幼い頃に妹・真利江が失踪している。隣に寝ていた祐一郎は母親(麻丘めぐみ)から「何か、見ていたんじゃないの、お兄ちゃんでしょ」と責められ、ずっと、その自責の念に苦しんでいる。妹はいまだに生死もわからないのだ。母親はその後、宗教に頼るようになり、父親(大森博)は祐一郎が16の時に病死している。ある日、出雲で監禁されていた少女が発見されたというニュースがあった。母親は「あれは真利江だ」と言い、弟の祐弥(木崎大輔)は真利江が帰ってくる」と言い出して狂乱する。そこで、実家に帰った祐一郎だが、家には重苦しい空気がよどんでいる。かつて荻原家の事件をテレビ番組で追っていたディレクター、相馬(宇崎竜童)も出雲の事件に刺激されて、ふたたび現れる。彼も妻の謎の失踪を経験しているのだった。祐弥は退院にあたって、祐弥は「これからは真利江として生きてみようと思う」と兄に話す。母親がひそかに買い続けている真利江の服を着て、玄関口に立った祐弥に母は「おかえり」とほほえんだ。祐一郎は、取材という名目で知り合ったナオミS&Mの女王ナオミ(小林明実)に電話をかける。哲学を専攻する彼は、テーマにS&Mの研究を選んでいたからだ。彼女に苦しみを吐き出し、祐一郎の自傷癖もおさまっていく。祐一郎はナオミとの時間が自分の中のなにかを解き始めていると感じていた。6歳の真利江への叔父(小市慢太郎)の性的悪戯。祐一郎は何度もそれを目撃しながらも、妹を救えなかった罪悪感。その苦悩をはき出した祐一郎はナオミによって許されることで現実に立ち向かう力を得る。そうして、祐一郎は現実と妄想の狭間へと歩き出すのだった。
- CASTING
- ●加瀬亮 1974年11月9日生まれ。神奈川県出身。2000年『五条霊戦記』で映画デビュー。主な出演作は、『みすゞ』(01)、『ハッシュ!』(02)、『ロックンロールミシン』(02)『壬生義士伝』(03)、『アカルイミライ』(03)、『カクト』(03)など。 ●宇崎竜童 1946年2月23日生まれ。京都府出身。73年、ダウン・タウン・ブギウギ・バンドを結成。81年、『駅-STATION』では日本アカデミー賞助演男優賞と最優秀音楽賞をダブル受賞。『TATTOO[刺青]あり』(82)でヨコハマ映画祭主演男優賞を受賞。そして82年『さらば相棒』、91年『魚からダイオキシン!!』でメガホンをとる。 ●寺島進 1963年生まれ。東京都出身。「ア・ホーマンズ」(86)でデビュー。北野武監督「その男、凶暴につき」(89)で注目される。主な出演作は「あの夏、いちばん静かな海」(91)、「ソナチネ」(93)、「おかえり」(93)、「マークスの山」(95)、「HANA-BI」(97)、「ポストマン・ブルース」(97)、「アンラッキー・モンキー」(98)、「風の穴」(01)「害虫」(02)、「13階段」(03)など。