顔
「妹殺し」は決して計画的な犯行ではなかった。衝動、むしろ事故ともいえる突然の出来事だった。生まれてからずっと劣等感や自己嫌悪という心の殻に篭りっきりの卑屈で歪んだ生活を送ってきた吉村正子は、実母の葬儀当日、妹を口論の末、殺害。35歳になってはじめて家を捨て、偽名を使い逃亡。行く先々で様々な人間に出会う正子。決して優しいとも美しいとも言えないそれらの出会いひとつひとつが、彼女に今まで感じたことにのない生きている実感を与えていく。しかし、その一方で、警察の手は着々と正子に迫っていた。
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