たまらん坂
2022年3月19日(土)公開
⼩⾬降る秋の⽇、⼥⼦⼤⽣ひな⼦が寺の境内を歩いている。毎年、⺟の命⽇には⽗の圭⼀と墓参りに訪れていたのだが今年はひな⼦⼀⼈であった。ふと⺟の墓前に⼀輪のコスモスの花が供えられているのが⽬にとまる。⺟が亡くなってから17 年、祖⽗⺟も⻤籍に⼊っており他⼈の影を感じることはなかったひな⼦は不審に思う。携帯電話が鳴る。受話器の向こう側では⾶⾏機が⽋航になり墓参りには来られないことを告げた上で、「たまらん」と漏らす圭⼀の声が聞こえる…。
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