1933年2月。ベルリンに住む9歳のアンナは、兄のマックスや友人とともにカーニバルを楽しんでいた。しかし、同じ夜、クラシックのコンサートに行く準備をしていたはずの両親はなぜか出掛けないまま、深刻な顔で話し込んでいた。そして翌朝アンナは「家族でスイスに逃げる」と母から突然告げられる。実は、新聞やラジオでヒトラーへの痛烈な批判を展開していた辛口演劇批評家だった父はユダヤ人であったため“次の選挙でヒトラーが勝ったらヒトラー反対者への粛清が始まる”という忠告を受けており、選挙が近づきヒトラーの勝利が現実味を帯びてくるにつれ、身の危険を感じた父と母はヒトラーの弾圧から逃れるために密かに逃避行の準備を始めていたのだ。住み慣れた家を離れる際「持ち物は一つだけ」と母に告げられたアンナは、大好きな“ピンクのうさぎのぬいぐるみ”、そしてお手伝いさんのハインピー、食卓、書斎、ピアノ、台所…一つ一つに別れを告げる。そしてそれは、それまで何不自由なく暮らしていた彼女の平和な家族の風景が一変、この日を境に過酷な逃亡生活へと足を踏み入れていく始まりでもあった…。
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ヒトラーに盗られたうさぎ
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2020年11月27日(金)公開