ウェス・アンダーソン監督の最新作『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』。解禁となったのは、初公開となるメイキングシーンと、たっぷりの本編映像で構成され、本作の魅力がぎゅっと詰まった特別映像。

はじめに登場するのはザ・ザの6度目となる墜落現場のシーン。アラートが鳴り響く機内で、冷静に着陸地点を決めるザ・ザの本編シーンとともにメイキング映像も組み込まれている。さらに、娘のリーズル、家庭教師のビョルンとともに迎える7回目の墜落現場も登場。ジャングルの奥地に墜落したザ・ザたちは、半壊した機体のなかでしばらく過ごすことになるが、この墜落をきっかけにそれぞれの抱える“重要な真実”が明かされる。これらの真実が、物語の大きな転機となっていくのだ。ジャングルでの墜落の直後には、デル・トロとセラが体当たりで挑んだ“底なし沼シーン”も登場する。底なし沼にあやまって落ちたザ・ザを、ビョルンが沼に飛び込んで助けるというシーン。CGやVFXを使用せず、実際にデル・トロとセラが底なし沼に入って撮影されているのだ。物語の大きな転機となるジャングルでの墜落シーンは、撮影の裏側含め、見どころ満載だ。
さらに、アンダーソン監督やスタッフ陣のこだわりを詰め込んだセットも紹介。ザ・ザ邸のいたるところに飾られている絵画や美術品は、実在の本物が使われている。アンダーソン監督が本作に着手した当初から、本物を使うことにこだわった。ルノワールやマグリットといった名匠の絵画たちがザ・ザ邸に集結し、彼の持つ莫大な資産を表現する。

ちなみに、欧州一の大富豪であるザ・ザの邸宅は、実際の屋敷をモデルにしているという。なかでも最も重要な着想源になったのは、ポルトガルの実業家で“ミスター5%”と呼ばれたカルースト・グルベンキアンのパリの屋敷。実在の実業家の屋敷にインスピレーションを得て作られたザ・ザ邸は圧巻の迫力。くわえて、ザ・ザ邸のエントランスギャラリーは、ベルリン一帯の城や邸宅でよく用いられているトロンプルイユ技法を駆使した大理石風の壁と円柱が再現されている。見た目だけを似せるのではなく、当時行われていた本来の工程と同じように手描きで製作するというこだわりぶり。『グランド・ブダペスト・ホテル』『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』など、数々のアンダーソン監督作品でタッグを組み、本作でも美術を担当してきたアダム・ストックハウゼンは、「ザ・ザの屋敷のデザインはまさに冒険だった」と話す。
そして、物語の最後の舞台であり、ザ・ザとヌバルおじさんの決戦の地となるホテル。ザ・ザの祖父が建築し、かつてはザ・ザの父が所有していたという設定のホテルは、エジプシャンリバイバル様式のスペースにヒエログリフをデザインしたエジプト風。ストックハウゼンにとっても、お気に入りのセットだという。

デル・トロはこれらのこだわりの詰まったセットで作られた本作を「重厚な世界」と表現し、「本当に素晴らしい体験」ができると絶賛。その世界観を評価するが、「最終的に心を満たしてくれるのは 人間らしさではないかな」と結ぶ。欧州一の実業家として命を狙われるほど名を挙げてきたザ・ザ。疎遠な娘との再会も、自身の資産と「フェニキア計画」を守るため、というビジネス的な目的があってのことだが、はたして、デル・トロの語る“人間らしさ”とはなんなのか? 娘との長い旅のなかで、ザ・ザの“人間らしさ”が浮かび上がる瞬間をぜひ劇場で確かめてほしい。
■『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』特別映像
9月19日(金)TOHOシネマズ シャンテ、渋谷ホワイトシネクイント他 全国ロードショー